古墳は、日本独自の文化遺産であり、古代の人々の生活や信仰、社会などを知る貴重な資料です。しかし、古墳は歴史だけではなく、芸術的な価値も持っています。古墳の形や構造、埋葬品などは、当時の人々の美意識や創造力を表しています。そのため、古墳には現代のアーティストたちも注目しており、様々な表現方法で古墳をモチーフにした作品を制作しています。今回は、古墳をモチーフにしたオブジェやインスタレーションを紹介します。
古墳をモチーフにしたオブジェやインスタレーション~古墳の形や意味を再解釈するアーティストたち
津田直+原摩利彦「トライノアシオト―海の波は石となり、丘に眠る」
写真家の津田直さんと音楽家の原摩利彦さんは、群馬県の古墳群を中心としたフィールドワークを通して共作したインスタレーション作品です。この作品では、古墳時代に大陸から渡来した文化に触れながら、古墳の構造や意味を再解釈しました。写真や音楽などを用いて、古墳と海と山と空という自然と人工という対比を表現しました。展示会場では、写真や映像が壁面に投影され、音楽が流れる空間が作られました。観客は五感を使って、古墳の魅力に触れることができました。
佐藤卓「TUMULUS」
彫刻家の佐藤卓さんは、鉄や木などの素材でオブジェやインスタレーションを制作しています。その中でも、「TUMULUS」というシリーズは、古墳をモチーフにしたものです。このシリーズでは、鉄板や木材で前方後円墳や方墳などの形を再現しました。しかし、それらは実際の古墳とは異なり、大きさや比率が変えられたり、色彩が加えられたりしています。また、それらは実際に埋葬施設があるわけではなく、空洞になっています。佐藤さんは、これらの作品で、古墳が持つ死と生,過去と未来,自然と人工という矛盾や謎を表現しようとしています。
古墳に描かれた壁画や埴輪を現代風にアレンジ~古墳の色彩やデザインを楽しむアーティストたち
古墳に描かれた壁画や埴輪は、古代の人々が造り出した芸術作品です。その中には、東アジア最古の天文図や方角の守り神である四神図、十二支像などがあります。これらは、当時の天文学や思想、宗教などを表していますが、同時に色彩やデザインとしても魅力的です。そのため、現代のアーティストたちも、これらをモチーフにした作品を制作しています。今回は、古墳に描かれた壁画や埴輪を現代風にアレンジ~古墳の色彩やデザインを楽しむアーティストたちを紹介します。
田中一光「キトラ・プロジェクト」
写真家の田中一光さんは、奈良県明日香村にあるキトラ古墳の壁画をモチーフにした写真作品を制作しています。キトラ古墳は、国宝に指定されている極彩色の四神図や十二支像、天文図などが描かれていることで有名です。田中さんは、これらの壁画を剥ぎ取った漆喰片を撮影しました。しかし、そのままではなく、漆喰片を光源として使い、暗闇で長時間露光させるという手法で撮影しました。その結果、漆喰片から発せられる微かな光が空間に広がり、幻想的な世界が生まれました。田中さんは、この作品で、キトラ古墳の壁画が持つ神秘性や美しさを再現しようとしています。
佐藤友里「埴輪の森」
陶芸家の佐藤友里さんは、古墳に埋められた埴輪をモチーフにした陶器作品を制作しています。埴輪とは、古墳の周囲に立てられた人や動物などの形をした土製の像です。佐藤さんは、埴輪の形や表情に惹かれ、自分なりの解釈で埴輪を再現しています。佐藤さんの作品は、古代の埴輪とは異なり、色彩や模様が豊かで、個性的です。また、埴輪を一つではなく、たくさん集めて展示することで、古墳の森のような空間を作り出しています。佐藤さんは、この作品で、埴輪が持つ不思議さや楽しさを表現しようとしています。
古墳に関する物語や伝説を題材にした絵画や漫画~古墳の歴史や文化を想像するアーティストたち
古墳に関する物語や伝説は、古代の人々の生活や思想、信仰などを知る手がかりとなるだけでなく、現代のアーティストたちにとっても創作の素材になっています。今回は、古墳に関する物語や伝説を題材にした絵画や漫画~古墳の歴史や文化を想像するアーティストを紹介します。
横山光輝「三国志」
漫画家の横山光輝さんは、中国の三国時代を舞台にした歴史漫画「三国志」を描いています。この作品では、中国の古墳である塚や陵が多く登場します。例えば、劉備玄徳が亡くなった後、蜀漢の臣下たちは彼の遺体を白帝城から成都へと運ぶ途中、劉備玄徳が眠る塚を建てる場面があります。この塚は実在し、劉備玄徳陵と呼ばれています。また、曹操孟徳が亡くなった後、曹丕文帝が彼の遺体を鄴城から洛陽へと運ぶ途中、曹操孟徳が眠る陵を建てる場面もあります。この陵も実在し、曹操高陵と呼ばれています。横山さんは、これらの塚や陵をリアルに描きつつも、それぞれに独自の解釈や想像を加えています。横山さんは、この作品で、三国時代の英雄たちが残した古墳が持つ歴史性やドラマティックさを表現しようとしています。
田中芳樹「アルスラーン戦記」
小説家の田中芳樹さんは、イラン神話をモチーフにしたファンタジー小説「アルスラーン戦記」を執筆しています。この作品では、イランの古墳であるゾロアスター教の塔やサーサーン朝の王陵が多く登場します。例えば、主人公のアルスラーン王子が故郷のパルス王国を奪還するために戦う途中、パルス王国の先祖であるサーサーン朝の王陵を訪れる場面があります。この王陵は実在し、ナクシェ・ロスタムと呼ばれています。また、アルスラーン王子がパルス王国の宗教であるミトラ教の信者たちと協力する途中、ミトラ教の塔を見る場面もあります。この塔は実在し、ダフメ・イ・モバードと呼ばれています。田中さんは、これらの塔や王陵を詳細に描写しつつも、それぞれに独自の設定や展開を加えています。田中さんは、この作品で、イランの古墳が持つ神秘性や魅力を表現しようとしています。
古墳を訪れて感じたことや思ったことを表現した写真や詩~古墳の空気や雰囲気を伝えるアーティストたち
今回は、古墳を訪れて感じたことや思ったことを表現した写真や詩~古墳の空気や雰囲気を伝えるアーティストたちを紹介します。
水谷さるころ「九州隠れ古墳10選」
イラストレーター・マンガ家の水谷さるころさんは、『旅チャンネル』で世界一周を2回経験した、古墳好きなアーティストです。水谷さんは、これまでに訪れた九州の古墳をイラストとマンガで紹介した「九州隠れ古墳10選」を発表しています。この作品では、竹原古墳や梅林古墳など、九州にある魅力的な古墳が次々と登場します。水谷さんは、それぞれの古墳の歴史や特徴だけでなく、自分が訪れた時に感じた印象や想像も織り交ぜています。水谷さんは、この作品で、九州の古墳が持つ不思議さやロマンを表現しようとしています。
佐藤智恵「百舌鳥・古市古墳群」
写真家の佐藤智恵さんは、2019年に世界遺産に登録された「百舌鳥・古市古墳群」を撮影した写真集「百舌鳥・古市古墳群」を出版しています。この作品では、仁徳天皇陵古墳や応神天皇陵古墳など、百舌鳥・古市エリアにある多数の古墳が美しく映し出されています。佐藤さんは、それぞれの古墳の形や色、光や影、周囲の風景や季節などを巧みに捉えています。佐藤さんは、この作品で、百舌鳥・古市古墳群が持つ美しさや存在感を表現しようとしています。
いかがでしたでしょうか?古墳は、現代のアーティストたちにとっても刺激的な題材であることがわかります。古墳とアートの出会いは、古墳の新しい魅力を発見するきっかけになるかもしれませんね。